「よし、だいぶ真っ直ぐに引けるようになったじゃん」


「うん、なんかコツを掴んだみたい」


放課後、私は海司と一緒に部活に出ていた。


「洗濯も問題なく出来るようになったし、ライン引きも出来るようになった。

もうそろそろ俺が辞めても良さそうだな」


「えっ、海司。辞めるの?」


「あのなぁ。いつまでも男の俺が、マネージャー補佐なんかしてるわけにはいかないだろう?

ここのサッカー部員はみんなお前には甘いし。

恵介だっているんだし、もう必要ねーだろ?」


「で、でも…」


ひとりでマネージャーなんて、なんだか自信がない。


「別にさ、俺がしていたみたいに、完璧なマネージャーになる必要なんてねぇよ。

アイツらは、ただお前がいてくれるだけで、すげー癒されてんだから。

お前には、それだけの価値があるんだよ。

だから、もう大丈夫だよ」


「海司…」


なんか、本当に海司変わったよね。


前は何も出来ない私のことを、ひどくバカにしてたのに。


入れ替わってから…。


そう。


海司のお母さんのことがあってからかな。


人を見る目が変わったような気がする。


そんなことを思いながら、ライン引きを再開していたその時。


「花音、危ない!」


海司の大きな声がグランドに響いた。