「化粧水はつけてる?」


寝起きのせいか、少し掠れた声で海司が言った。


「あー、うん。ベースも塗ってある」


「そうか」


そう言って、化粧ポーチのファスナーを開ける海司。


「じゃあ、ファンデからな」


ファンデーションのパウダーをスポンジにつけて、自分の手の甲で余分な粉を払う海司。


トンと、私の頬にスポンジが優しく置かれた。


「顔の中心から外側に伸ばすんだ。

ちょっとの量でいい。薄付きの方が崩れにくいから」


「ふぅん…」


「じゃあ、目閉じて」


私は海司に言われるまま、そっと瞼を閉じた。


「目の周りは皮膚が薄いから。

ここは優しく叩くように馴染ませる」


そう言って海司が軽いタッチで、目元にファンデショーンをのせた。


「もういいよ、目を開けて。

次は鼻。

ここは皮脂で崩れやすいから、ここも薄付きで軽く叩くようにしてつけるんだ」


私の姿の海司がしていたメイクは、ちゃんとカバーしているのに自然な感じだった。


なるほど。


場所によっても、ちゃんと塗り方を工夫していたのね。


さすがは、完璧主義な海司だ。