そ、それは…。


俺に対してじゃない。


素の花音に対して言ってるんだ。


「夏くらいから、美倉さん急に可愛くなったしね。

実はちょっと気になってたんだ。

でも、やっぱり中身かな?

表裏がないし、優しくて性格も良いから女の子の友達が多いよね。

さっきの歌声も、不器用だけど一生懸命で。

守ってあげたいって言うか、なんか可愛くてしょうがない感じ」


「うっ」


なに、そのはにかんだ顔。


こんな恵介は初めて見る気がする。


マジで花音のこと、気になってるんだ。


「告白とかは、まだするつもりはないんだ。

部員とマネージャーが付き合うのは、俺は基本良くないと思ってるから。

でも、海司だけには知っておいて欲しくて。

海司は俺のこと…応援してくれるよね?」


そう言って、曇りのない澄んだ瞳で俺を見つめる恵介。


花音は、ずっとお前に憧れてたんだ。


一年の頃からずっと。


だから、お前が告白さえすれば、すぐに両思いになると思うよ。


一番の親友と、俺が唯一話せる女子。


この二人が付き合うことに、反論の余地なんてどこにもない。


「あぁ…」


俺がそう答えると、恵介は嬉しそうに笑った。


だけどなぜか。


喉の奥で、何かが引っかかっているような気がしていた。