Change!俺とアイツの怒涛の9ヶ月日記

扉の向こうから、俺の顔をした花音が顔を出す。


その顔色はひどく青ざめていて、身体全体が小刻みに震えていた。


「海司…。大丈夫?」


お前だって大丈夫じゃないくせに、人の心配なんかするな。


そう言いたいけど、言葉にもならない。


俺は壁にもたれかかりながら、なんとか立ち上がった。


「海司の保険証ってどこにあるの…?」


こめかみを押さえたまま、花音が問いかける。


「あ、あぁ…。リビングに収納扉があるだろ?あそこの…。あーもういいや。俺が行く」


説明してるくらいなら、俺が出した方が早い。


俺は靴を脱ぐと、壁に寄りかかりながらリビングへと歩いた。


目の前がゆらゆらと揺れる。


たった数メートルの距離なのに、どうしてこんなにも遠く感じるんだろう。


もしかして、救急車とか呼んだ方がいいレベルなんじゃないだろうか。


空いたままのリビングの扉を抜け、やっとの思いで収納扉に手をかけたその時。


「うっ」


突然、頭のてっぺんからつま先までを裂かれるような痛みが、俺の全身を駆け抜けた。


「海司っ」


俺の声で叫ぶ花音の声が、なんだか遠くから聞こえる。


ふわりふわりと身体が揺れ、次第にぐるぐると脳内が回り始めた。


視界はひどく揺らいで、もう何も見えなかった。


あぁ…俺死ぬんだなって。


そう思ったら、強張っていた全身がとろんと緩んだ。