「母さん」


私は思わず声に出した。


「なあに?海司」


私の顔を見つめるおばさんの瞳は優しい。


「俺ね、母さんが大好きなんだ」


「えっ?」


私の言葉に、みんなが驚いた表情をしている。


「でもね。

俺が母さんを好きな理由はね。

料理がおいしいからとか、家事が出来るからとか、美人だからとか。

そんな理由だからじゃないんだ」


おばさんが目をパチパチさせている。


海司がこんなことを言うなんて、私も想像できないから、この家族が驚くのは当然かもしれない。


それでも私は続ける。


「俺が母さんを好きな理由はね。

母さんが、俺の母さんだからだよ。

俺を産んでくれた、たった一人の母さんだからだよ」


「海司……」


「ホントに、ただそれだけ。

だからね、母さん。

ありのままでいいから。

料理が嫌いでも、掃除が嫌いでも。

別にいいんだ。

髪がボサボサでも、メイクなんてしていなくても。

服がダサくても、多少不潔でも。

それでも俺は母さんが好きだ。

この世にたった一人の、俺の母さんだから」


そう。


私は自分の母親に対して、そう思っている。


私のお母さんは、母親としてはちょっと情けない部分も沢山ある。


だけど、たった一人のお母さんだから。


私は本当に心から大切に思っている。


その思いを、そのままおばさんにぶつけた。


海司の気持ちを代弁するように……。


おばさんの目から、涙がこぼれる。


ふと視線を横に移すと、美空さんもおばあちゃんも泣いていた。