A組の中を見ると、強そうな女子3人組に囲まれている木原さん。
「ペンキ持って来い」
「ペンキぶっかけるぞ」
という脅迫にも、木原さんは全く動じていなかった。
いつものように、無表情のまま、ただひたすらにダンボールにペンキを塗っていた。
木原さんって…強い子なのかな。
そう思ってしまうくらい、私には凄く見えた。
もしも、私が木原さんの立場になったら。
きっと、学校にも来れないくらい、精神がボロボロになると思う。
「あのさぁ、赤ペンキないと、作業進まねんだよ」
「持って来いっつってんだよ。聞こえねーの?」
…結局さ。
いじめてる人っていうのは、心が弱いんだよ。
自分を守るために、必死なんだよ。
自分がいじめられないように。
クラスで強い方にいないと。
だったら、いじめる側に立とう。
そうしたら、自分がいじめらることはない。
自分が優越感に浸るために、自分を守るために、いじめているんだと思う。
小学生の時の担任の先生が言っていた。
ーーいじめる人は、寂しい人。
今考えれば、そうだなって、素直に思う。
A組の中には、水原くんがいなかった。
…ホッとしたような、残念なような。
水原くんと会ったら、緋奈乃の言葉を思い出してしまう気がする。
ねえ、水原くん。
八神萌のこと、好きだったの…?
