次の日から、本格的に文化祭の準備が始まった。
放課後にクラスメイトで残って、文化祭の話で盛り上がりながらする準備は、凄く楽しい。
部活が忙しい人は、前半だけ参加して、後半は部活に行く。そんな感じ。
元々部活動に力を入れていない高校だから、厳しくはないんだよね。
そんな感じで、文化祭の準備は、順調に進んでいる。
でも…たまに頭の中を過るのは、緋奈乃の言葉。
ーー『流矢くん、中3の時に、凄く好きな女の子がいたんだって』
…あぁもう!
その言葉が頭の中を支配していて、凄く腹立つ。
…自分に、腹立つ。
「緋奈乃。ちょっとトイレ行ってくる」
この気持ちを振り払いたくて、私は気分転換に教室を出る。
緋奈乃は私の気持ちが分かったらしく、笑顔のまま、なにも言わなかった。
教室を出てすぐ、隣のクラスのA組から、凄い騒がしい声が聞こえてきた。
「ねえーきーはーらーさーん!聞こえてんのー?」
「ペンキ持って来いって言ってるんですけどー?」
「無視すんの?だったらこのペンキ、アンタにかぶせるけど」
キャハハ!と甲高い笑い声が、嫌味ったらしく耳に響く。
木原さんのいじめ、まだ続いてたんだ…
なんで誰も、止めたりしないの?
「こんなことやめよう」って、声をかけてあげないの?
…でも、こうやって木原さんがいじめられているのを知っているのに、何もできない私も、かなり酷いヤツ。
そんなこと、分かっている。
