それを聞いて思い出したのは、あの日、水原くんの部屋で見た、あの写真。



あの写真は2年前のだったから、中3の時の写真。



今より少しあどけない水原くんの隣に立つ、可愛らしい女の子。



頭に同じ色のオレンジのハチマキを巻いていたから、体育祭の時にでも写真を撮ったんだと思う。



私も見たことがないくらい、楽しそうに笑っていた水原くん。



隣に立つ女の子も、目を細めて可愛く笑っていた。



そして、卒業アルバム。



私が写真の女の子を指差した時、水原くんの表情は変わった。



その時から水原くんは不機嫌そうに、だけど、悲しそうな表情をして。



私はそのまま帰ったんだ。



…ーー八神萌。



水原くんの好きな女の子は、その子だ。



「いや、でも、絶対今も好きとは言い切れないよ。ただ、塾の子がそうだと思うって言ってただけで」



こんなに胸がモヤモヤして、気持ち悪くなるのは、初めてだ。



なに、この気持ち…



「…だから、流矢くんはやめといた方がいいと思うよ?辛いのは、真湖だよ?」



辛いよ。今だって辛い。



水原くんのことを好きでもない今だって…それを聞いて辛い。



「だから、蒼くんなら…真湖を笑顔にさせてくれる。私は、真湖のためを思って言ってるの」



緋奈乃の気持ちは分かるけど、私にはそれができない気がする。



こんなに弱くて意気地なしでダメダメな自分。



こんな自分が…やっぱり大嫌い。