蒼くんと電話を終わらせて、強い視線を感じた。
隣を見ると、気持ち悪いくらいニヤニヤしている緋奈乃が。
「…なに?」
「うんうん!やっぱり、蒼くんと真湖はお似合いだよ。付き合っちゃえばいいのに」
無理だよ。
だって、蒼くんと会ったのは、ファミレスの時一回だけだし…
水原くんと見に行った試合と、緋奈乃と見に行った決勝戦でも蒼くんは見たけど、
面と向かって会ったのは、ファミレスだけだし。
まだ、私は蒼くんのことを全部知っているわけじゃないし、付き合うっていっても、私は…
蒼くんよりも気になる人が、いるし。
そんな簡単な気持ちでなんか、付き合えるわけがない。
傷つくのは、蒼くん。
笑顔が似合う蒼くんには、傷ついて欲しくないから。
「蒼くんとは…友達のままでいいかなって思ってる」
「…しつこいと思うけど、それってやっぱり、流矢くん?」
緋奈乃はいつも、水原くんの話になると、困ったように眉を下げる。
あっ、そういえば…
蒼くんを紹介してくれたあの日。
まだ蒼くんと吉春くんが来る前に、緋奈乃は何かを言いかけてた。
ーー『同じ塾の子で、流矢くんと同じ中学だった子がいるの。その子から聞いたんだけど』
ーー『流矢くん、中3の時に…』
緋奈乃が言おうとした時に、蒼くんと吉春くんが来たんだった。
