私は恥ずかしくなって、緋奈乃の口を抑える。
緋奈乃は苦しそうに私の腕を掴んだ。
「も、もうっ!真湖って女にしては力強すぎじゃない⁉︎」
「今は関係ないでしょ⁉︎」
なんでいきなり握力の話になるのよ!
まあ、確かに私は女にしては握力ある方かもしれないけどさぁ。
私も少し気にしてるのに。握力強いの。
「でもさ、蒼くん誘って一緒に回りなよ。蒼くんも喜ぶと思うよ?」
緋奈乃と玄関を出て、外を歩く。
蒼くんか…でも、夕ヶ丘だし、部活とか忙しくないのかな?
吉春くんだって、来れるかも分からないのに。
「蒼くん忙しいと思うし…」
「でも、誘うだけ誘いなよ!私も吉春誘うし。来れなかったら、一緒に回ろう」
私は吉春くんの代わりですか。
でも、蒼くんと最近会ってないし、誘うだけ誘ってみるか。
…本音を言うと。
一番回りたかったのは、水原くんなんだ。
水原くんと回れないことくらい分かってる。
水原くんは人気者。そんな彼と回ることなんて、できるはずがない。
なにより、きっと水原くんファンからの視線が痛いと思う。
でも…やっぱり、回りたかったな。
