服は普通の喫茶店らしいエプロン。
良かった…コスプレとかだったらどうしようって思ってたから。
私と緋奈乃は午前担当になり、午後は自由。そして、私と緋奈乃は接客になった。
「楽しみだねー」
今日は始業式だから、午前中で終わり。
緋奈乃と玄関で靴を履きながら、1ヶ月後の文化祭の話で盛り上がる。
「うん。人生初の文化祭だし、今からワクワクする」
「吉春誘いたいけど、部活かなぁ」
緋奈乃の脳内はいつだって吉春くんだらけなのか。
そう思ってしまうくらい、緋奈乃の口からは吉春くんの名前がよく出てくる。
それほど好きってことだから、いいことだけどね。
「真湖は誰と回るの?文化祭」
緋奈乃は靴を履き終えて、私に首を傾げる。
うーん…緋奈乃くらいしか頭に浮かばないけど、緋奈乃は吉春くんと回るんだろうな。
さすがにふたりの邪魔はしたくない。
「私はクラスの子と適当にふらついてよっかな」
私も靴を履き終え、苦笑い気味に言う。
だけど、緋奈乃は満足いかなそうな表情をしている。
綺麗な肌に、眉間にしわが…
「蒼くん誘いなよ‼︎」
そして、玄関に響き渡るくらいの大きい声でそう叫んだ。
緋奈乃の声は、なんというか…
遠くにいても通るような声をしている。
そんな緋奈乃が叫ぶもんだから、玄関にいた生徒が驚いたように私たちを見る。
「ちょっ、緋奈乃!声大きいって…」
