今日は寝坊でもしたのか、ピョンと少しだけ寝癖がついている。



それに、目もトロンと伏し目がちで眠そう。



見ている限り何回もあくびしてるし…



そう思いながら水原くんを見つめていると、不意に水原くんがこっちを見た。



遠いけど、分かってしまう。



ヤバイ…今、目合ってる…



やっぱりあの日のことが少しだけ気まずくて、思わず逸らそうとする。



だけど。



水原くんが目を細めて笑いながら、私に向かって軽く手をあげた。



ちょっとしたことなのに、嬉しくなる。



それと同時に、いつもの水原くんだと、安心した。



私も笑顔で手を振ると、水原くんはまたあくびをした。



眠そうだな、本当に。



「わっ、流矢くん、さっき私がバイバイした時は頭下げただけなのに、真湖には手あげた!しかも流矢くんから!」

「たまたまじゃない?」

「そうかなー」



私はまた視線を外に移す。



だけどそこには、もう水原くんはいなかった。







「えー、新学期始まって早々で悪いんだが、来月に行われる文化祭についての話し合いをすることになった」



夏休みに海にでも行ったのか、夏休み前よりも黒く焼けた担任が、咳き込みながら言う。



文化祭か…



風凪では、3年に一度文化祭が行われる。



そして、文化祭があるのが今年らしい。



「じゃ、学級委員出てきてくれ。あとはよろしく」



やる気のない我が担任。



学級委員をいつも雑用に回す、最低教師だ。



学級委員が教卓の前に立ち、手を教卓の上に置く。



「なにかやりたいものとかありますかー?」



やりたいもの、か。



文化祭といえばなんだろう?