いかにも幸せ真っ只中!という緋奈乃に比べて、私はどんよりした雰囲気のまま。



気になる…



私の頭の中には、水原くんが野球やってる姿を勝手に想像したり、八神萌ちゃんの顔を思い出したり…を繰り返したまま。



「…あのさ、真湖。なに悩んでるの?」



緋奈乃は私の前の席の子に椅子に勝手に座り、眉を下げて聞いてきた。



緋奈乃はいつもそう。



一番に私を理解してくれる。私の心も、いつだって見通してくれる。



いつもなら緋奈乃にはすぐ相談するけど…今回のことは何故か分からないけど相談できない。



「…真湖はいつもひとりで溜め込みすぎ!言いたくないなら言わなくていいけど、無理しないでよ?」



緋奈乃の優しい声に、泣きたくなる。



私って、こんなに弱いヤツだったんだなぁ。



「あっ、そういえば。蒼くんとはどうなってるの?」



緋奈乃はニヤリと笑う。



本当…緋奈乃は百面相が得意なんだから。



蒼くんとは、たまにだけどメールをしたり、電話をしたりする。そんな関係。



でも、やっぱり練習が忙しいらしく、前よりメールの返事が遅くなってる気がする。



私も気遣って、“メールしてこなくてもいいよ”って言ったんだけど、“真湖ちゃんのこと好きだからメールしたい”って言われて。



そう。蒼くんはかなりストレートに言ってくる。



言い慣れないことばかり言われるから、私も凄く照れる。



あぁ…思い出すだけで顔が熱くなる。



「あれれ、顔真っ赤だけど?何があったのかなあ?」

「何もないってば!メールとかするだけだしっ」



私の中で蒼くんは、友達止まり。



友達以上に、考えたことはない。



でも、蒼くんがあまりにもストレートに気持ちを伝えてくるから、真剣に考えないとだな、とは思ってる。



でも…脳裏に浮かぶのは、いつだって水原くんなの。



なんで水原くんなんだろう…



「あっ、祐介と流矢くんだ。おーい!」



緋奈乃は窓の外を見ながらそう言うと、窓を開けて外に向かって叫ぶ。



水原くんとは、あの家に行った日以来会っていない。



しかも、帰る時の水原くん、上の空で不機嫌そうだったから、なんとなく気まずい。



私もチラリと外を見ると、元気に緋奈乃に手を振る祐介くんと、眠そうにあくびをしながら緋奈乃に頭を下げる水原くんがいた。



水原くんの姿を見て、やっぱりドキっとしてしまう。