水原くんと無言で階段を降りると、リビングから丁度出てきた水原くんのお姉さんと、バッタリ鉢合わせしてしまった。
うわっ…水原くんと似て、やっぱり綺麗なお姉さんだ。
お姉さんは私を見て大きい目をさらに見開くと、ニコッと目を細めて笑った。
「おぉ、これが流矢の彼女?アンタでかしたじゃん!」
「こんな綺麗な彼女、よく見つけたね」と、お姉さんは笑いながら水原くんの脇腹をつつく。
水原くんは嫌そうに顔を歪ませて、お姉さんの頭を叩いた。
「勝手に解釈すんな。彼女じゃないっつってんだろ。ただの友達」
ーーただの友達
この言葉だけで、私の心は深く傷つく。
…そうだよね。私と水原くんは、ただの友達。それ以上でも、それ以下でもないんだ。
分かってる。分かってるけど。
やっぱり傷つくよ…
「友達を普通家に上げるかぁ?まあいいけど。えっと、名前は…」
「笹倉真湖です」
「真湖ちゃんね。私は水原亜弥(アヤ)。またいつでも来てね」
亜弥さんはふふっと可愛く微笑む。
私も微笑み返すけど、水原くんが気になってしょうがない。
水原くん…なんか元気なくなった。
上の空っていうか…
「じゃあ、帰ります。お邪魔しました」
亜弥さんは笑って手を振ってくれたけど、水原くんは無表情のまま頭を一回下げただけ。
どうしたんだろう。やっぱり、やかみめいちゃんが、関わってる?
モヤモヤしたら気持ちのまま家を出る。
私は一回ため息をついたあと、顔をあげた。
