その子の名前を見る。
“八神萌”
「やがみ、もえ?」
「違う。やかみめい」
やかみ、めい、ちゃん。
凄く可愛い子だと思った。
艶のある綺麗な黒髪が、真っ白な肌に良く似合っている。
笑うと水原くんみたいに、細くなる目。睫毛なんか本当に長くて、凄く羨ましい。
パッツンの前髪は整っていて、髪の毛もあの写真のようにポニーテール。
笑うとできる左頬のえくぼと、少しだけ覗く八重歯も可愛くて…
女の子の中の女の子。まさにそんな子だと思った。
「…可愛い子だね」
水原くんと一緒に映ってた、やかみめいちゃん。
水原くんと、どんな関係なんだろう。
「…もう遅いから帰れ」
…えっ?
水原くんは無表情で、私の瞳を見つめる。
さっきとは打って変わって、声も低くなった。
私が固まっていると、水原くんはサッと立ち上がった。
「送ってくから」
水原くんは私から目を逸らすと、そのまま部屋を出て行こうとする。
「…大丈夫。私、ひとりで帰るから」
水原くんの背中に向かってそう言うと、水原くんは足を止めた。
そして、私の方へ振り返る。
その瞳は、やっぱり悲しそうに揺れていて。
水原くんは、苦しそうに少しだけ笑った。
「ごめんな」
私は首を横に振る。
やかみめいちゃん。
その子の話になった途端、水原くんの表情は、悲しそうに歪んだ。
…やかみめいちゃんと、どんな関係なの?
気になるよ。聞きたいよ。
でも。
なんだか怖くて、聞けないんだ。
