しかも、理想高い!とか思われてそう。



今頃恥ずかしくなる。



だけど、水原くんは少し固まった後、ふっと優しく笑った。



「俺もそう思う。軽い気持ちでなんか付き合ってらんねーよって」

「だから水原くんも、彼女できないんだ?」

「できないんだって…言い方変えろよな。なんか俺が悲しいヤツみたいじゃん」



水原くんはクスクス笑う。



かっこいいよなぁ、水原くん。



仲良くなって、水原くんは心も優しくて、温かくて。



まあ、意地悪だけど。



ここまで仲良くなれるなんて、思いもしなかった。



「笹倉は、好きなヤツとかいんの?」



水原くんのその言葉に、咳き込んでしまう。



好きな、人?



好きな人…好きな人…



「いない、かな」



好きな人は、本当にいない。



でも…



気になる人は、目の前にいる。



「まあ、光先輩のこととかあるもんな」



ほら。



水原くんがこうやって優しく笑う度に、私の心臓は早くなるんだ。



「水原くんは、いないの?」

「…俺?」



うーん…と、水原くんは考えるように黙り込む。



しばらく沈黙が続いた後、水原くんは少し笑って口を開いた。



「いる」



…なんでだろう。



頭がガーンと岩か何かで打ち付けられたように、痛くなった。



それと同時に、胸も締め付けられるように苦しくなる。



「へぇー…いるんだ?」



私はまるで気にしていないかのように、笑って誤魔化す。



そっか。いるんだ。



水原くんのことだから、いないかと決め付けてた私がバカだった。



「でも、半分諦めてる。どうせ相手は俺のこと好きじゃないから」

「…私が知ってる人?」



水原くんはピタッと黙る。



そして、いきなり立ち上がると、そのままドアの方へと歩いて行った。



「俺の恋バナなんか聞いても面白くねーよ。てか、飲み物とか持って来てなかったわ。持ってくる」



そう言って、水原くんは部屋から出て行った。