水原くんは、慣れたのかな?



「物心ついた時から、いつも家帰っても親はいなかったし、今は寂しいともなんとも思わない」

「そっか」

「だからと言って、親と仲悪いわけじゃないよ。会えば普通に話すし。医者って堅いイメージあるけど、俺の両親はそんなことないから」



水原くんがいつものように笑うから、私も安心する。



良かった。本当は、寂しいんだと思ってたから。



ホッと胸を下ろしていると、私のバッグに入っていたスマホがブーブー震えた。



誰からだろう?



スマホを開くと、緋奈乃からラインがきていた。



どしたんだろう。



《真湖〜!今日○○球場にいたでしょ?話しかけようとしたけど、隣に流矢くんがいるからやめた☆》



嘘!緋奈乃に見られてたんだ。



緋奈乃は夕ヶ丘応援してたから、今頃勝って喜んでるんだろうな。



そういえば、緋奈乃に最初誘われてたのに、断っちゃったんだっけ。



謝らないとだ。



《水原くんと見に来たの。緋奈乃の誘い断ってごめんね(・_・;》

《ううん、気にするな!夕ヶ丘勝って嬉しかった〜》

《私は風凪応援してたんだけどね。吉春くんに、おめでとうって言っておいて》

《りょーっす。じゃあ、今から吉春と遅めのお昼食べてきま〜す》



最後の方は惚気になってるし。



はあ、いいなぁ。緋奈乃は幸せそうで。



緋奈乃と吉春くん。本当に凄くお似合い。



「なんか落ち込んでるけど。何かあった?」



水原くんが、心配そうに顔を覗き込んでくる。



か、顔が近い!



私は少しだけ水原くんから離れて、火照った顔を冷ますように手で仰ぐ。



「落ち込んでるわけじゃないんだけど、彼氏ってどうなんだろうって思って」

「彼氏?」



水原くんの眉が、少し上がる。



「私、光先輩しか付き合ったことないから、付き合ってる幸せとか、分からないんだよね。だからといって、彼氏欲しい、とかは思わないんだけど」

「思わないんだ?」

「だって、彼氏とかって、欲しいって思うものじゃなくない?私は自分が心から好きだって思える人とか、私の心も愛してくれる人がいい」



って、私なにベラベラ話してるんだろう。