なんやかんやで来てしまった…



私の目の前には、“水原”という表札。



そして、私の家よりも全然大きい、なんかもう、金持ちそうな家。



そっか。水原くんのご両親は、お医者さんだって言ってたっけ。



お医者さんなら、お金持ちだよね。



そんな豪邸に、私が入っちゃっていいの?



「入って。汚いけど」

「お、お邪魔します」



凄い緊張する。



中に入ると、汚いと言う割りに、全く汚くない綺麗な玄関が見える。



整ってるな…私の家の玄関なんて、脱ぎっぱなしやらなんやら、もう酷い状態。



私もいつもみたいに雑に脱がないで、靴を脱いで綺麗に揃えた。



階段を登って水原くんの部屋に着いた。



水原くんの部屋は、男の子らしくシンプル。



でも、部屋の中心に置かれているテーブルの上だけが、たくさんの物で散乱されていた。



水原くんは慣れたように、テーブルの横に座る。



私はどこに座ればいいのか分からなくて、ドアの前で立ち止まった。



水原くんの部屋をキョロキョロと見渡す。



目に入ったのは、部屋の片隅に置かれてるベッド。



それを見て、思い出した。



そういえば…水原くん、前屋上で言ってたよね。



ーー『でも、俺だって男だし。それなりの経験はあるわけ』



それなりの経験…



それって、まあ、それだよね…



水原くんは、ここで…ってこと?



…って、なに私。気持ち悪い!



そんなこと考えて、変なの。



私は振り払うように、ブンブンと大袈裟に首を振る。