初球。
祐介くんはボールを捉えるように、バットを振った。
カーン‼︎と強い音が鳴り響く。
球場にいるみんなが、センターのさらに向こう側を見る。
祐介くんの打ったボールは…スタンドへと吸い込まれた。
球場が熱気に包まれる。
凄い…凄い!
祐介くんが、ホームラン打った!
夕ヶ丘のピッチャーは、エースではない。でも、祐介くんの放ったホームランで、涙を流している風凪の野球部員が何人もいた。
「さすが祐介。やるじゃん」
水原くんはホームに帰ってきた祐介くんを見て、目を細める。
「うん…祐介くん凄い!」
あんなにチャラチャラしてて、いつもふざけてばかりの祐介くんだったけど。
野球している祐介くんは…凄く輝いて見えた。
「「ありがとうございました!」」
だけど、祐介くんから後はヒットが出ずに、結果は5-1で夕ヶ丘の勝利。
夕ヶ丘は明日、準々決勝に進む。
「今年も夕ヶ丘なんかな」
私がポツリと呟くと、水原くんは首を傾げた。
「どうだろうな。夕ヶ丘、エース温存しすぎだし。出してもいいと思うんだけど」
確かに。
今日はエースが出てこなかったし…
温存しすぎるのも、あまり良くないんだよね。
でも、やっぱり野球は面白い。
何が起こるか、最後まで分からないんだから。
「水原くん、今日は誘ってくれてありがとね。本当楽しかった」
球場を出て、私は少し興奮しながら言う。
まだ熱が収まらない。あの広い球場が、頭から離れない。
