光先輩から助けてくれたのも、水原くんだった。



いつだって明るくて、意地悪だけど…



水原くんは、温かい人だよ。



水原くんが私から離れるって考えると、凄く嫌だし、怖くなる。



だから、そんなこと、言ってほしくない…



「…俺も、笹倉から離れるって考えるの、嫌だな」



水原くんは、少しだけ微笑む。



私、本当おかしい…



今日で何回、水原くんにドキドキさせられただろう。



「勘違いするなよ?笹倉って、俺がいないとやっていけなそうじゃん」



意地悪そうにニヤリと笑う水原くん。



ムカつくけど…



いつもの水原くんに戻った気がして、嬉しさが増す。



「でも…笹倉みたいなヤツ、俺好きだよ」



…なに、それ。



どういう意味?



「てか、試合始まる。早く戻ろう」



聞こうとしたけど、水原くんがハッとしたようにそう言うから、聞けなかった。








六回表が始まった。



風凪は中々点が取れない。



夕ヶ丘が優勢のまま、最終回になってしまった。



夕ヶ丘の応援はますます盛り上がる。



風凪の攻撃。



バッターボックスには、祐介くん。



「おっ、祐介じゃん。アイツ、女にはだらしないけど、やる時はやる男だからな。ホームランでも打ちそう」



水原くんが楽しそうに笑う。



祐介くんは見たことがないくらい真剣な表情で、バッターボックスに立っている。



そうだよね。これで負けたら、先輩とも野球ができなくなるんだよね。



私も両手を握り、ギュッと願う。



頑張って!祐介くん!