「そ、彼女。だから近付かないでくれる？」



…えっ？



私の頭が真っ白になってる時、彼女たちの悲鳴が聞こえた。



「嘘でしょ⁉︎りゅ、流矢くんに彼女⁉︎」

「ちょっと、顔見せなさいよ‼︎可愛くなかったら許さないわよ⁉︎」



水原くんの私を抱きしめる腕に、力が込められる。



そして、こう言った。



「可愛いとかそういうの、関係ないだろ。つーか、俺の彼女、お前らみたいなヤツに見せるかっつーの」



「てか、邪魔」と水原くんが低い声で言うと、彼女たちが去って行く足音がした。



水原くんはゆっくり私から離れると、困ったように笑った。



そして、自分の頭をくしゃっとさせる。



「ごめん、あんなことして。俺といるところ見られたくなさそうだったから、笹倉の顔隠そうと思ったら、あんなことしちゃった」

「いやっ、水原くんといるところ見られたくなかったとか、そういうんじゃなくて……」

「いいよ、無理しなくて。俺もバカじゃないし、自分が女子に騒がれてることくらい分かってる」



「ナルシストなわけじゃねーよ」と、水原くんは笑うけど、水原くんが悲しそうな瞳をするから、私は笑えなかった。



「俺といると、みんな嫌な目に遭うんだよ。昔からそうだった。笹倉も…今日誘ってごめん」



水原くんが、私に頭を下げる。



水原くんは、私が思ってた以上に、辛いことでいっぱいいっぱいなのかもしれない。



私は頭を下げている水原くんに、「謝る必要ないでしょ？」と言うと、水原くんはゆっくり顔を上げた。



「確かに…水原くんといると、女子からの視線が怖いって、思っちゃう。でもね、でも…」

「……」

「水原くんが私から離れるって考える方が、もっと怖い」



水原くん。



私は水原くんが、心の底から優しい人だって、知ってるよ。