「えっ、流矢くんじゃない⁉︎」



手を繋がれたまま球場の中に入ると、横から女の子の声が聞こえた。



水原くんは面倒くさそうな顔をしながらそっちを向く。



私も見ると、そこには私と同じ学校の、確か…隣のクラスの女子3人がいた。



やばい…この子たち、水原くんのファンだ。



私といるところなんてバレたら、何されるか分からない。



私は慌てて俯いた。



水原くんと繋がれた手を振りほどこうと、力いっぱい手を振る。



でも、水原くんは、それを阻止するかのように繋がれた手に力を込めた。



顔が熱くなる。きっと私の顔は、ゆでダコのように赤いだろう。



「うわぁっ、夏休みに流矢くんと会えるなんて嬉しすぎ‼︎」

「ホントホント!私服姿も見れちゃったし、マジヤバすぎ〜」

「流矢くんも、野球見に来たのぉ?」



3人の女子にキャーキャー騒がれる水原くん。



私の存在にすら、気付いていない…よね。



水原くんの横顔をチラっと見上げる。



水原くんは、不機嫌モード全開。



眉を寄せて、ムッと口を真一文字に結ぶ。



「あれ?隣にいるの…彼女?」



ひとりが、少し声を低くしてそう言った。



私はビクっと肩を震わせる。



どうしよう…同じ学校だし、バレる。



私はさらに顔をうつむかせる。



お願い…バレるな!



「えっ…手繋いでるし。流矢くんに彼女いるの⁉︎」

「木原唯香じゃないよね…誰?」



私の願いは届かず、彼女たちは私に近づいてくる。



そして、私の顔を覗き込もうとしたその時。



いきなり強い力で引っ張られたと思ったら、ふんわりと柔らかい匂いに包まれた。



私の背中と腰には…水原くんの腕が回されていた。



私…水原くんに抱きしめられてる?



ドキドキしながらそう思った時、水原くんの低い声が響いた。