「なに?俺の顔になんかついてる?」

「いや、違くて。凄い…楽しそうに野球見てるなって」



見惚れてたというのもあるんだけど。



水原くんは私をジッと見ると、何故か吹き出した。



「野球って見てて楽しいじゃん。笹倉はつまんない?」

「ううん。一生懸命な人見るのって、凄く楽しいし凄くかっこいい」



風凪か夕ヶ丘。今日で部活を引退する人がいる。



三年間、どんな思いで野球に賭けたんだろう。



どんな思いで、今試合してるんだろう。



たくさんの汗を流して、笑って時には泣いて。



みんな、一生懸命なんだ。



「…一生懸命なヤツって、かっこいいよな」



水原くんも目を細めて少しだけ笑いながら、試合に目を向ける。



水原くんも、一生懸命に野球やってた時期が、あったんだよね。



私も水原くんから、試合に目を向けた。







試合も進み、今は五回裏が終わり休憩。



今のところ夕ヶ丘が勝っていて、3-0。



やっぱり夕ヶ丘は上手い。



キャッチャーの肩も強いから、風凪が盗塁しようとしても、いつも阻止するくらい。



夕ヶ丘はまだエースを出さない。



もしかして、出さないのかな。



「あー喉乾いた。お茶買ってくるから、ここで待ってて」



休憩が始まり、水原くんは私にそう言うと立ち上がる。



私はそんな水原くんに、首を横に振った。



「私も行こうかな。ちょっと歩きたいし」

「歩きたいって…ダイエットかよ」



水原くんはおかしそうに笑う。



ダイエットって、酷い!



私は水原くんの腕を叩くけど、男の水原くんには私のパンチなんて痛くないらしく、全く痛そうにしない。