まだ試合は始まっていなくて、私は祐介くんと洸耶と吉春くんと蒼くんを探す。



あっ、祐介くんと吉春くん発見。



ふたりは仲良さそうに話していて、拳をぶつけ合っている。



その姿を見て、安心した。



あのファミレスの日から、ふたりの関係が悪くなっちゃったか不安だった。



男の喧嘩は、すぐ仲直りできるんだよね。



女の喧嘩は長引くから。



祐介くんと吉春くんから視線をずらすと、蒼くんがいた。



蒼くんは、確かメールで…中学の時はポジションセンターだったって言ってた。



今は2年生だから、ベンチ入り。



蒼くんは友達と、楽しそうに話しながらストレッチをしていた。



「それにしても、人多いね」



隣に座る水原くんに話しかけるけど、水原くんからの反応はない。



水原くんを見ると、水原くんは向こうの方を見て固まっていた。



「水原くん?」

「…あぁ、ごめん。なに?」



水原くんはハッとして私の方を見る。



少し慌ててるような水原くんが、可愛く見えた。



「なんかボーッとしてたけど、どうしたの?」

「いや…夕ヶ丘って、応援すげーなって思って」



水原くんは、夕ヶ丘を見てたんだ。



やっぱり水原くんは、夕ヶ丘からの推薦を蹴ったことを後悔しているのだろうか。



私も夕ヶ丘のスタンドを見る。



県立の風凪とは違い、私立の夕ヶ丘。



風凪の応援団よりも、倍の数くらいいるんじゃないかというくらい、人数がすごかった。



学ランにまとった応援団。黄色いポンポンを持つチアリーダー。そして、それぞれの楽器を持つ吹奏楽部。



凄い…迫力ある。



こんな応援だと、夕ヶ丘もやる気出ちゃうよね。



「水原くんはどっちを応援するの?」



私がそう聞くと、水原くんは笑いながら即答した。



「風凪に決まってんじゃん。祐介いるし」

「そっか。じゃあ私も風凪応援しよっかな」

「じゃあってなんだよ。夕ヶ丘応援する気だったのか?」

「違う違う!迷ってただけ」



だって、吉春くんもいるし、蒼くんだっているし…



でも、洸耶もいるし、祐介くんもいる。



ここはやっぱり、風凪を応援するべきかな。



でも昨日、蒼くんに頑張ってメールしちゃったし。



もうっ。こうなったら、両方応援すればいいよね。