S駅につくと、時計塔に寄りかかりながら俯いている水原くんを見つけた。



通り過ぎる女の子が、チラチラと水原くんを見て騒いでいる。



かっこいいもんね…オーラ凄いし。



そんな水原くんと、まさか出かけることになるとは、思いもしなかった。



いつもは制服だし、今日の私服姿が新鮮でかっこいい。



私は髪の毛を手ぐしで整えて、水原くんの元へ駆け寄った。



「ごめん!待った?」



水原くんは顔を上げて、私を見る。



久々に見る水原くん。



ますますかっこよく見えた。



「大丈夫。俺もいきなり誘ってごめん」

「ううん。私、凄く暇だったから」

「なんだそれ」



水原くんが目を細めて笑う。



可愛い笑顔だな…胸がキュンと締め付けられる。



そのまま話しながら、電車に乗り込む。



そういえば、行き先聞いてない。



「どこ行くの?」

「まあ、行けば分かるよ」



うーん…どこだろう。



水原くんはお楽しみって言うし、まあいっか。



そのまま電車に揺られること20分。



電車を降りると、私の知らない街に出た。



どこだろう。



水原くんを見ると、水原くんは笑いながら言った。



「ここ、俺の地元」

「水原くんの?」



てことは…わざわざ遠回りしてくれたんだ。



「うん。ここから家も近いけど、今日はあれ見に来た」



水原くんは、少し向こうにある建物を指差す。



それは…野球場だった。



「今日、風凪と夕ヶ丘だろ?行ってみようかなって思って。だから笹倉誘ったんだけど」



野球…



この間のことを思い出す。



水原くん。野球やめたのに見に来るってことは、まだ野球が好きなのかな?



やりたいって、思ってるのかな?



聞きたいけど、聞けない。



「あ、ごめん。笹倉は野球あんま興味ないよな」



黙ったままの私を、覗き込むように見てくる。



顔が至近距離で、顔が熱くなる。



「いや、私野球好きだよ。お兄ちゃんが野球やってるから、影響されて」