退屈…



今日は一日中暇。



しかも、早起きしちゃったし…



今は9時。



私は自分の部屋でゴロゴロしながら、スマホをイジる。



蒼くんとは、あの日以来少しだけメールしてる。



でも、一昨日から県予選が始まったこともあり、最近はあまりしていない。



甲子園行きを決める、大事な試合だもんね。



そして今日は、夕ヶ丘と風凪の試合がある。



お互い勝ち進んで、今日当たったんだ。



夕ヶ丘には蒼くんがいるけど、風凪は私の高校だからなぁ。



どっちを応援すればいいのか分からない。



緋奈乃はもちろん夕ヶ丘応援。そして、今日は試合を見に行くって言ってた。



私も誘われたんだけど、断ってしまった。



昨日蒼くんには、頑張ってと、一言だけメールをした。



それにしても、本当今日は退屈。



「…やっぱり試合見に行けば良かったな」



今更ながら、緋奈乃の誘いを断ったことを後悔。遅いのに。



意味もなくスマホをイジっていると、スマホがブーブー震えながら音楽を鳴らした。



電話だ。



誰だろう、と呑気に思っていると、表示されていた名前に、体を起こしてしまう。



嘘っ!水原くん⁉︎



「は、はい」



慌てて出る。緊張しすぎて噛んでしまった。



電話の向こうからは、水原くんの笑い声が聞こえる。



水原くんから電話くるなんて初めてだから、嬉しくなる。



しかも今は夏休み。久しぶりに聞くその声に、ドキドキしてしまう。



『あのさ、今暇?』



普段聞く声よりも、電話で聞く声の方が低い。



「うん、暇だけど…」

『良かった。じゃあ、S駅来れる?』



S駅とは、私の家から一番近い最寄り駅。



これって…遊びの誘いだよね?



退屈な一日が、急に楽しみになった。



「分かった!今から準備して行くね」

『待ってる』



ヤバイ、早く準備しないと!



私は急いで服を選んで、髪を整えて、軽くメイクをする。



どうしよう。張り切ってるとか、思われないかな?



…って。何だか私、恋してる女の子みたいじゃん。



心の中でツッコミながら、高速で家を出た。