「あれ、祐介だよな?」



蒼くんたちと話してから、2時間が経った。



吉春くんが窓の外を見て、指を差しながらそう聞いてきた。



「あ、本当だ。おーい!祐介ー!」



緋奈乃が祐介くんに向かって、大きく手を振る。



いやいや緋奈乃…窓あるの気付いてないで叫んでるよね。



祐介くんが気付くわけ…って、あれ?



祐介くんはすぐに気付き、ファミレスの中に入ってきた。



そして、私たちの席のところに来る。



「おす!って、お前ら呑気にファミレスとかずりーな!」



「俺なんか練習帰りだぜー」と、スポーツバックを見せてくる。



制服を着ている祐介くんだけど、額に少し汗が出ている。



「来週県予選があるっつーのに、夕ヶ丘は練習ないのか?余裕ってところか」



祐介くんが嫌味ったらしく笑うと、吉春くんはムッとした表情になった。



「バーカ。そんなんじゃないから。監督が用事できただけ」

「監督いなくても自主練くらいするだろ!彼女とイチャコラしてる暇あんなら、練習しろ」

「はあ?女にだらしないお前に言われたくない」



祐介くんと吉春くんがブーブー言い合ってるのを見て、さすがの緋奈乃も苦笑い。



蒼くんはふたりの言い合いを見て、笑って言ってきた。



「こいつら会えばすぐこうなるんだよ。でも、仲良いんだけどね」

「蒼くんも祐介くんと仲良いの?」

「中学の時、同じ野球チームだったから」



そうなんだ。



世間って狭いなあ…と、年めいたことを思う。



「だあー!夕ヶ丘と当たったら、絶対負かせるからな!」

「今年も俺らが甲子園行くから」

「去年も一昨年も夕ヶ丘だろ!たまには譲れ!」

「ちょっと祐介うるさい!迷惑になる!」



緋奈乃が祐介くんに負けないくらい大声を出す。



祐介くんも緋奈乃には逆らえないのか、シュンと肩を落とした。