好きな人…



そう聞かれても、誰も頭に浮かばなかった。



「いないよ」

「じゃあ、気になる人は?」



気になる人…



その時、私の頭に浮かんだのは…



優しく笑う、水原くんだった。



「その表情だと、いるんだ?」



「そっか…」と小さく呟いて、蒼くんが机に突っ伏してしまう。



だけど、すぐに顔を上げて、真剣な表情で私の目を見て言った。



「でも、俺にもチャンスあるよね?」

「チャンス…?」



私は鈍感ではない。どちらかといえば、勘には鋭い方。



だから、蒼くんのチャンスという意味くらい、なんとなくだけど分かってしまった。



「実は俺、前に真湖ちゃん見てるんだ。可愛いなって、思った。その時吉春といたんだけど、吉春が真湖ちゃんと仲良いっていうから、今日紹介してもらった」

「そうだったんだ…」

「だから、今日は俺のための集まりみたいな…」



蒼くんの顔が凄い赤いから、こっちまで少し照れてしまう。



蒼くんは鼻の頭を少しかくと、咳払いをして私を見る。



「真湖ちゃんに一目惚れして…今日こうやって話して、ますます好きになった。だから、俺のことも真剣に考えてほしい」



いきなりそう言われると…頭が真っ白になる。



でも、ストレートに想いを伝えることって、難しいし恥ずかしいと思う。



だから、私もちゃんと蒼くんの想いを、受け取らないといけないんだ。



「分かった。じゃあ…友達から始めよう?」

「うん。絶対、真湖ちゃん手に入れるから」



はにかみながら笑う蒼くん。