「は?俺、そんな風に見える」

「見えるっていうか…え?もしかして、いたことないの?」

「うん」



驚いた。



中学の時とか、いたんじゃないの⁉︎



「でも、俺だって男だし。それなりの経験はあるわけ」

「それなりの経験?」

「え、なに。言わせる?」



水原くんがニヤリと怪しそうに笑う。



それを見て、私は思わず顔を引きつらせた。



それなりの経験って…そういうことだよね。



いや、彼女いたことないのに、それなりの経験したことあるって、どういうこと?



「彼女いたことないのに…もしかして、女癖悪かったとか?」



気になったから聞いたのに、水原くんはどんどん不機嫌そうに眉を寄せる。



そんなところもかっこいいと思ってしまう。



「女癖は悪くない。でも…なんであんなことしちゃったんだろうって、後悔してる。しなきゃ良かったって」

「後悔しても遅いよ」

「まぁな」



そっか。水原くんも、やっぱり男なんだよね。



いや、当たり前なんだけど。



「てか、笹倉は何で遅くまで学校残ってんの?」

「え?日直だからだけど」

「じゃあ、日誌書いてたんだ」



うん。日誌書いてた。



それで隣から声が聞こえてA組に行ったんだけど…って。



そうだ!私、日直だったんだ!



「日誌書いてたけど、まだ途中なんだった!」



呑気に水原くんと話してたし…



「じゃあ水原くん、また明日ね」



私は立ち上がろうと腰を上げる。



だけど、私が立ち上がる前に、私の腕は、水原くんの手によって掴まれてしまった。