「木原さんのこと、好きとかそういう感情ないの?」

「はあ?」



私の質問に、水原くんは眉を寄せる。



だって、良くあるじゃん。



小説とかであるし。



幼なじみ同士が恋に落ちて、付き合う…みたいな。



だから私の周りでは、幼なじみが欲しい!って言ってる子は多かった。



私は別にそんなこと思ったことはないけど…やっぱり水原くんも、木原さんのこと好きだったりするのかな?



そう思うと、胸がちょっとだけ痛む。



「お前、バカすぎ」



私が色んなことをグルグル考えている時、水原くんの呆れた声が聞こえた。



水原くんを見ると、ムッとしたような、不機嫌そうな…そんな表情をしている。



「小説の中の話だろ。まあ、現実にもあるかもしんないけどさ。俺は唯香をそんな風に見たことないし。大事な幼なじみってだけ」



そうなんだ…



何で私、ホッとしてるんだろう。



「それに、俺だけじゃなくて、唯香も俺のことをそんな風に見たことないと思うし」



…そうかな。



私にはどうも、そう思えない。



だって、今日の体育の時間。



木原さん、恋する女の子みたいな瞳で、ある一点を見つめてた。



真っ直ぐに、その一点を見てた。



それが、バスケをしている水原くんだったんだよ。



水原くんはそう言うけど、木原さんは、水原くんのことをただの幼なじみだと思ってない。



水原くんのこと、好きなんだと思う…



「それに俺、今好きな人とかいいやって感じだし。なんか、面倒っつーか」

「でも、過去に彼女とかいたことあるんでしょ?」



むしろ、彼女いたことないとかはないよね。



だって、あの水原くんだよ?



女慣れとかしてそうだし。