君に恋するその日まで

ミーハー気質な緋奈乃は、珍しく流矢くんのファンではない。



いつも街中でかっこいい人を見つけると、すぐにキャーキャー騒ぐ緋奈乃が、流矢くんのファンではない理由。それは、本当に簡単。



「はあ。吉春(ヨシハル)に会いたいなー」



そう。緋奈乃には、彼氏がいる。それも、先月で2年迎えた。



私たちとは違う高校に通う、吉春くん。



私たちが通う進学校、風凪高校とは違い、吉春くんが通うのは、私立夕ヶ丘高校。



夕ヶ丘は私立なだけあって、スポーツがとにかく盛ん。特に野球部。



甲子園常連校として、全国にも名が知られている名門校。



そして、吉春くんは野球部だ。



今は2年生だから、吉春くんはベンチ入り。内野手で、中学の時はショートだった。



夕ヶ丘は練習量が半端なくて、“会う回数が減った”と、緋奈乃もかなり悩んだ時期があった。



それでも2年続いているふたりは、本当に想い合っているんだな、と思う。



それに比べて私は…



「あっ、光(ヒカル)先輩きてるけど…」



緋奈乃が不安そうな声でそう言う。



私はその言葉にビクっと肩が跳ね、思わず机の上に突っ伏した。



本当最悪。何でわざわざ教室までくるわけ?



楽しい昼休みまで邪魔しないでよ…



「おい、真湖。何ビクビクしてんだよ」



大嫌いな声がすぐ上で聞こえて、私は突っ伏したままギュッと強く目をつむる。



その態度が気に入らないからか、私の後頭部をグッと上にあげる。



私の目の前には、力強い瞳の先輩。



…本当に怖い。