うん。言ってたね。



ーー『流矢くんが幼なじみじゃなければ、こんなことされずに済んだのにね』



「俺がいなければ、唯香はこんなことにならなかったんだよな」

「水原くん…」



水原くんがあまりにも悲しそうに笑うから、何て声をかければいいか分からなかった。



そんな、悲しそうに笑わないでよ…



いつもみたいに、明るく笑ってほしいのに…



「俺が唯香のいじめの原因なんだよ。そんなことは分かってる。だから、さっき唯香がいじめられてんの見てたのに、何もしてやれなかった」

「…私もだよ」

「え?」

「もしここで木原さんを助けたら、次は私がいじめられるんじゃないかって思ったら、何もできなかった」



水原くんだけじゃない。



きっと、他にもいると思う。



人間はみんな弱いんだ。



だからこそ、お互いを助け合って、生きていくんだ。



「…俺の親、医者って言ったじゃん。だから、小さい頃から完璧主義で、俺も何もかも完璧じゃないといけないって、育てられたんだ」

「そんな…」

「周りのやつらも俺のこと完璧だって言うし、なんかそれが…嫌だった。周りとは違うって思われてるみたいで」

「……」

「俺が、人間じゃないって遠回しに言われてるみたいで、凄い嫌だった」



水原くんにそんな悩みがあるなんて、知らなかった。



いつも明るい水原くんが、そんなことを思っていたなんて、気付かなかった。



私も水原くんは、完璧な人だって、正直思ってた。



でもそれが、水原くんを苦しめていたんだ。