水原くん…凄く切なそうな瞳をしていた。



わたしはもう一度教室の中を見る。



「何か言えよマジで」

「気持ち悪いんですけどー」



お前らの喋り方の方が気持ち悪いわ。



ここで言えたらかっこいいだろうな。



言えない自分…情けない。



私もA組の教室から離れて、水原くんを探しに行った。



自然と足が、屋上に向かっていた。



なんとなく、水原くんがいそうな気がしたから…



屋上のドアを静かに開けると、やっぱり水原くんがいた。



フェンスに寄りかかって、空を眺めて座っている水原くんが。



…光先輩から私を助けてくれた時と同じように、水道タンクの裏のフェンスに。



「水原くん」



黙って空を眺めていた水原くんが、ゆっくり私に顔を向ける。



私を見ると、水原くんは少しだけ微笑んだ。



そして、自分の隣をポンポンと叩く。



「座れば?」

「うん…」



水原くんの隣に、少しだけスペースを空けて座る。



私も水原くんと同じように、空を眺めた。



青くて広くて、綺麗な空。



綺麗だなあ…



「笹倉も、さっきの、見たんだろ?」



水原くんが、いつもより低い声で呟く。



さっきの、って…あれだよね。



「うん…日誌書いてたら、何か聞こえて」

「そっか」



静かな空気が流れる。



しばらくお互い黙ったまま。



先に口を開いたのは、水原くんだった。



「俺と幼なじみじゃなければいじめられてなかった、って言ってたじゃん?」