私も中学1年生の時までは、その言葉の重みについて、何とも思っていなかった。



だけど、中2の冬休み。私の大好きなおばあちゃんが、病気で亡くなってしまった。



おばあちゃんは厳しくて、礼儀正しくて。だけど、優しくて明るい人だった。



私はおばあちゃんが本当に大好きで、迷惑もかけたし、面倒もたくさん見てもらってた。



だからその分、おばあちゃんが亡くなったことは私の心にかなりダメージを負った。



そんなおばあちゃんが、亡くなる前に私に残した言葉。



ーー『今生きていることは奇跡だということを、忘れずに生きなさい』



この言葉は、私の胸を強く打ち付けた。



それから私は、今生きていることを誇りに思うようになった。



どんなに辛くても、苦しくても。



この言葉を思い出せば、死ぬことよりも苦しくないんだ、って思えるようになった。



だから。



死ねなんて言葉、簡単に言わないでよ…



私はふと、水原くんの方を見る。



水原くんは教室の中を、無表情で見つめている。



どんな思いで、幼なじみの木原さんのいじめを見ているの?



自分のせいだって、責めてるの?



水原くんは視線に気付いたのか、私の方に顔を向けた。



視線が絡むと、水原くんは少しだけ大きい目をさらに見開いて、気まずそうに瞳を揺らす。



そして、私から背を向けて、どこかへ歩いていった。