私もいじめられている木原さんを見ている限り、助けてあげないといけないのに。



“何やってんの⁉︎”って怒鳴ることくらいできるはずなのに。



足がくすんで動かない。



怖い、と思ってしまう自分がいる。



こういう時、緋奈乃がいれば凄く頼もしい。



緋奈乃は正義感が強くて、周りに流されず自分の意見をしっかり言える子。



緋奈乃だったら、言えるんだろうな。



私は弱いから、次は自分がされたらどうしよう、って思うと。



木原さんよりも自分を優先して、言えないんだ。



「お前が流矢くんと幼なじみだから悪いんだよ?流矢くんが幼なじみじゃなければ、こんなことされずに済んだのにね」



そう言って、より力を込めて木原さんの髪の毛を引っ張る。



…いくらなんでも、酷すぎる。



そう思っているのに、何もしてやれない私の方が、酷いのかもしれない。



「マジその顔ウザい。あーもうっ‼︎とっとと消えてくんねーかなあ。マジ死ね‼︎」



死ねって…なんでそんなことが簡単に言えるの?



そんな言葉、簡単に人に言えるものじゃないでしょ?



私の拳に、ギュっと力がこもる。



私は、“死ね” “死にたい”という言葉が大嫌いだ。



こんなことは当たり前だと思う。でも、今の子は簡単にその言葉を口に出せるんだ。