女子みんなが男子の試合を白熱して見てる中、私はある一点を見つめていた。



それは…木原さん。



木原さんはやっぱりひとりでいる。それも、みんなからだいぶ離れた場所で。



木原さんも男子の試合を見ている。それも、かなり真剣な瞳で。



恋する女の子のような瞳で、試合を見ていた。



誰に恋しているのか分からないけど、もしかして木原さんは…



「おぉー、流矢くんがシュート決めた」



周りがキャーキャー興奮し始める。



緋奈乃も立ち上がっていて、私も男子の試合を見ると、A組の男子に囲まれて笑っている水原くんがいた。



その姿を見て、胸がキュンとする。



最近良くある。



水原くんの笑顔を見ると、水原くんの声を聞くと。こうやって胸がキュンとするんだ。



なんか嫌だな…もしかして…って思っちゃう。



無駄なのに。水原くんに恋をしたって。



…この気持ちは恋じゃない。



私はそう思い、水原くんから視線を逸らした。



「あ、そうそう。真湖忘れてないよね?」

「えっ、何を?」



突然、緋奈乃が真剣な声でそう言い出す。



目の前では男子がバスケをしているから、うるさくて緋奈乃の声が小さく聞こえる。



「夏休み始まってすぐの水曜日!」

「…何かあったっけ?」



夏休み始まってすぐの水曜日……あっ‼︎



「吉春くんが私に男紹介するってやつ?」

「それ!吉春も気合い入ってるし、忘れないようにね」



あの時は私も少し乗り気だったけど…



なんか今は行く気がしない。



「緋奈乃…それって行かなきゃダメ?」

「なに、行く気なくなった?」

「うーん…やっぱいいかなって」



緋奈乃怒るよね…



そう思ってたのに、緋奈乃は怪しそうにニヤリと口角を上げて笑みを浮かべた。