「もう、野球はやらないの?」
「…やんねぇかな。2年はやってないから」
そっか。そっか。
もう、やらないんだ。
水原くんが決めたことだから、私がとやかく言う必要なんてない。
でも…一度だけでいいから、見てみたかった。
私は腰をあげて、校庭を見た。
ガヤガヤと賑わう校庭。
知らない制服や、近くの高校の制服や。
色んな制服が見られる。
今は楽しい文化祭。
私も楽しむはずだったのに。
なんで、こんなにも悲しい気持ちなんだろう。
気付けば水原くんも立ち上がっていて。
私と同じように、校庭を眺めていた。
水原くんを見ると、水原くんは、ある一点を見て、悲しそうに瞳を揺らした。
なんだろう…
水原くんの視線を辿ると、そこには。
屋上の真下にある中庭で、洸耶と八神さんが、ふたりきりで話していた。
水原くんを見ると、私は思わず、胸がたまらなく苦しくなった。
だって、水原くんが。
一粒の涙を零していたから。
