私は深呼吸して、屋上のドアノブを握る。



そして、ゆっくりとドアを開けた。



屋上の中を見ると、水原くんが、フェンスに寄りかかって座っている。



空を見上げながら。



私は水原くんに近付く。



水原くんの目の前に立つと、水原くんは、目を閉じていた。



寝ているのかな?



それとも…



八神さんのことでも、考えてるのかな。



ダメだ。



恋すると、ネガティブになる。



臆病になる。



水原くんを見ていると、水原くんは、ゆっくりと目を開けた。



そして、私を見ると、驚くことなく、少しだけ笑った。



「やっぱり。誰かいると思ったんだよなぁ」



水原くんは隣を叩いて、「座んなよ」と呟く。



私は頷いて、水原くんの隣に腰を下ろした。



「文化祭は?ほら、男と回るって言ってたじゃん」



蒼くん…



蒼くんは、もう来てるのかな。



でも、今は。



水原くんの、隣にいたい。



「水原くんも、文化祭いいの?」

「ちょっと。今は気分じゃないから」



気分じゃない…



「それって…八神さんのせい?」



聞いたらダメなことだって、分かってるのに。



止まらなくなってしまった。



水原くんも、目を見開いて私を見る。



「ごめんね…祐介くんに、全部聞いた」



水原くんは、「そっか」と呟き、また視線を上に移す。



その横顔は、やっぱり悲しみで溢れていて。



私も、悲しくなる。