君に恋するその日まで


「本当にそれでいいのか?」



11月中旬の放課後。



今日は三者面談。



俺の決心に、担任は目を見開いて確認を求めてくる。



「はい。もう、決めたんで」

「まさか…お前が夕ヶ丘の推薦蹴るとはなぁ…」



そう。俺は、夕ヶ丘の推薦を蹴った。



両親には、もう話してある。



怒られると思ったけど、すんなりと認めてくれた。



父さんは、少し納得のいかなそうな表情をしていたけど。



「じゃあ、夕ヶ丘じゃなくて、どこ志望してるんだ?」

「風凪です」



そして俺は、志望校を風凪に変えた。



担任は、また驚いたように目を見開く。



「まあ、お前の成績なら風凪は行けるが…進学校だから、部活と勉強の両立は難しいぞ?いいのか?」



部活と勉強の両立。



確かに、俺には無理だ。



でも…もう、部活と勉強の両立なんて、俺には必要ない。



「俺、高校で部活しません。もう、野球はやめます」



だって俺は、もう野球から離れるから。



担任は、本日三度目の目を見開く。



「や、やめる必要はないだろ。お前は将来有望の選手なんだぞ?プロだって夢じゃない。それなのに、なんでいきなり」



だって俺には…そんな資格、もうないから。





あの日以来、俺は、洸耶と萌と話さなくなった。



俺と洸耶はお互い避けていて、萌は、俺が一方的に避けている。



萌は何度か俺に話しかけようとしてくるけど、俺はもう、萌と関わらないって決めた。



正直辛い。かなり辛い。



萌は俺の好きな人だから。こんなこと、したくない。



だけど、これ以上萌と関わったら、いけないと思った。



俺自身が、ダメになる気がした。



だから、これでいいんだ。



もう、洸耶とはバッテリーなんか組めない。



俺たちには、分厚い壁ができてしまったから。



だから、野球からも離れることにしたんだ。



俺は、洸耶とじゃないと、最高の野球ができない。



夕ヶ丘にいって、上手くやっていける自信がなかった。



でも、風凪にいっても、洸耶とはバッテリーなんか組めない。



俺には野球をする意味がなくなってしまった。



だから俺は、野球をやめる。



関わらないって、決めたから。