「流矢…帰るね」
コルクボードの前に立っていると、制服を来た萌が、のぞき込んで来た。
俺と萌は家を出る。
「送ってく」
「いや、大丈夫。近いし」
近くねぇだろ。
でも、萌らしいなって、思う。
「あっそうだ。…どうする?」
萌が眉を下げて、困ったような表情を浮かべる。
どうするって…
「なにが?」
「…今日、私たちしちゃったじゃん。祐介とかに言うのかなぁって」
祐介、唯香、そして…洸耶。
俺は、言うつもり。
俺が馬鹿なことしたって。
まだ中3で、受験前なのに、こんなことしてごめんって。
俺はちゃんと言うつもり。
萌にそう言おうとした時、後ろから声がした。
「しちゃったって…なにを?」
この声って…
俺と萌が振り向くと、そこには、洸耶が立っていた。
萌は大きく目を見開いている。
なんで、洸耶がいるんだよ。
「流矢にさっきは言い過ぎたって謝りに来たら、流矢の家から萌が出てくるから驚いて…そしたら、会話聞こえたから…」
洸耶の声が震えている。
俺は、自分が嫌になった。
俺…自分のことで精一杯だった。
洸耶が傷つくことなんて、考えてもいなかった。
「しちゃったって、お前ら、まさかさ…違うよな?」
「…ごめん」
俺は嘘なんかつけない。
俺が謝ると、洸耶は顔を真っ赤にさせた。
怒るのは、当然なこと。
悪いのは、俺だから。
「…付き合ってんの?」
「洸耶聞いて!私が流矢に言ったの!流矢は、悪くないから。それに、私は洸耶が好きなの!」
そうだよ。
萌が好きなのは、俺じゃない。洸耶だから。
もう、今更俺が洸耶に謝っても遅い。
手遅れだ。
