萌だけじゃない。
俺は、唯香や祐介にも、救われた。
「ふたりが幸せになるところ見て、流矢も次に進みなよ」
唯香は優しく笑うと、教室を出てしまった。
ふたりが、幸せになるところ、か。
俺はそれで、吹っ切ることができるのだろうか。
多分、簡単なことではないと思う。
俺はまだまだ、萌を想い続けると思う。
だって、そんなちっぽけな気持ちで萌を好きになったんじゃないから。
間違いなく、必死に追いかけた恋だったから。
でも…ふたりが幸せになるところを見送って、
心の底から、
『おめでとう』
って言いたい。
俺は屋上に向かった。
もしかしたら、もう実ったかもしれない。
もしかしたら、萌が緊張しながら、言葉を震わせているかもしれない。
緊張するだけ、無駄だっての。
両想いなんだから、ふたりは。
屋上のドアをゆっくり開ける。
もう屋上には、萌と洸耶が向かい合って立っていた。
「あのね…えっと…」
萌、緊張してるのバレバレ。
まあ、俺も緊張したけどな。
萌は顔を真っ赤にして。
洸耶も気付くだろ?あれなら。
萌は俺が好きなんだ、って。
「…洸耶のことが好きです」
萌の声が、俺の耳にもクリアに聞こえた。
萌は顔を俯かせている。
洸耶を見ると、洸耶は驚いた表情を、一切見せなかった。
それどころか、悲しそうな、困ったような表情をする。
…なんでそんな表情すんだよ。
もっと、喜べよ…
だけど、洸耶は表情を変えて、真剣な表情で、萌に頭を下げた。
「…ごめん。俺、萌の気持ちに応えられない」
