「約3年も、お前の球を取ってきたんだ。お前は才能あるよ。だから、高3の夏の県予選決勝は、流矢率いる夕ヶ丘対、俺率いる風凪で戦おうな」
「はあ!?祐介率いる風凪だろ!」
高3の夏、県予選決勝。
俺はその頃何をしているんだろうか。
萌を忘れて、違う子を好きになっているだろうか。
それとも、萌のことを想い続けているのだろうか。
洸耶は萌を、甲子園に連れていくのだろうか。
中学生の俺には分からない。
高3の俺にしか分からない未来だ。
俺は志望校を夕ヶ丘に決めた。
野球をやっていないからか、すっかり俺は髪の毛が伸びてしまった。
落ち着かねーな。坊主の時は、すっきりしてたんに。
俺は伸びた髪の毛を触っていると、唯香が俺のところに来た。
「流矢、夕ヶ丘いくんだね?おばさんから聞いた」
唯香とは家族ぐるみの仲。
特に俺の母さんと仲良くて、俺ん家来れば、いつも母さんと長話してる。
母さんも唯香のこと大好きで、俺と唯香が結ばれてほしいらしく。
お互い、そんな風に見たことないのに。
「おー。唯香はどこ?」
「私は風凪」
俺の周りは風凪が多いな。
…ということは。
萌も風凪なんかな。
「萌は夕ヶ丘だよ」
唯香が俺を見て微笑む。
やばっ。俺、顔に出てた?
「夕ヶ丘って吹部凄いでしょ?萌はトランペットの才能あるし、夕ヶ丘で続けたいんだって」
萌は吹奏楽部。
そして、トランペット担当。
俺は音楽について何も知らないけど、トランペットなら知ってる。
萌が、楽しそうにトランペットの話をしてるから。
俺が野球にかけているように、萌もトランペットにかけてるんだ。
