「愛しの萌ちゃんから、デートのお誘いじゃん」
洸耶にしか聞こえない程度の声でそう言うと、洸耶は顔をりんごみたいに真っ赤にする。
分かりやすいヤツ。
「デートとかじゃないだろ。多分、勉強教えてとか、そんなんだよ」
デートじゃなくても、羨ましいよ。
萌に想われてるお前が、羨ましいんだよ。
「もうすぐ中間でしょ?勉強教えてくれないかなぁって…」
洸耶が言っていたとおり、勉強のお誘い。
洸耶は1回咳払いをすると、一つ返事で了承した。
俺はそんなふたりの光景が見ていられなくて…
その場から離れてしまった。
「流矢くうん?ひとりなのお?」
ひとりで廊下を歩いていると、中学生には見えないくらいケバい女が5人やって来た。
こんなケバいヤツより、萌みたいなくらい清楚な子の方が断然いい。
俺はそいつらと視線を合わせず、横を通り過ぎる。
「ねえ、流矢くんってさあ」
通り過ぎた瞬間、ひとりが俺の腕を掴んできた。
俺が手を振り払おうとした時、女がとんでもないことを言い出した。
「八神萌のこと、好きなの?」
