それを聞いた瞬間、もう叶わないって確信した。
ふたりは両想いで。俺は、そのふたりの間に入る邪魔者。
そっか。両想いか。
この時の俺は、自分でも分からないくらい冷静だった。
『そっか。萌、いい奴だもんな。頑張れよ』
そんな萌だからこそ、俺も惚れたんだ。
『ありがとな。流矢は?好きなヤツとか、いねぇの?』
いるよ。
お前と同じヤツだよ。
そんなこと言えるわけがない。
俺は洸耶も大事なヤツに変わりない。
俺の最高の相棒で、俺の球は洸耶しか取れないから。
でも、俺って心の狭い男なんだよ。
萌と洸耶が幸せになってほしくないって…
思ってしまう自分がいる。
自分が憎くてしょうがない。
こんな自分…捨てたい。
俺は叶わない恋を、今でも続けている。
現在進行形。
そのまま月日は流れて、中3の体育祭の練習が始まった。
中学校生活最後の体育祭。
そのせいか、俺のクラスは、やけに気合いが入っている。
『流矢は種目なに出るの?』
隣の席の萌が、目を細めて笑う。
その笑顔に、今だに慣れない。
やめてくれよ、マジで。
俺がどんだけドキドキしてるか…分からないだろ。
