『好きな人?』



女が大好きな恋バナかよ…



いつもならスルーするのに、萌の好きな人が、俺は凄く気になった。



『…いるよ』



…いるんだ。



って、俺、凄いショック受けてんだけど…



『誰?』



おいおいおい。



唯香、そこまで聞くかよ…



まあ、さすがに萌も言わないよな。



『…洸耶』



…はっ?



萌のヤツ…マジで言ってんの?



『へえ、そうなんだ。どこに惚れたの?』

『前に洸耶が……』



そこからの会話は、もう何も入ってこなかった。



そっか…分かった。



この気持ちの正体が。



俺は…萌が好きなんだ。



俺自身をちゃんと見てくれた萌。

可愛く笑う萌。

心の底から優しい萌。



俺は、初恋の甘酸っぱさを知った日に、



失恋の痛みを知った。




その日から、俺は萌を諦めようと必死に努力した。



でも…諦めるどころか、どんどん膨らんでいく想い。



恋って、努力して諦めるものじゃないんだ。



萌は洸耶の前で、女の表情を見せる。



洸耶が笑えば萌も笑う。



洸耶が他の女と話すと、泣きそうな顔をする。



それを見ているのが、辛かった。



そしてある日。



野球の練習中に、洸耶が顔を赤くして言ってきた。



『実はさ…俺、萌のこと好きなんだよね』