俺が笑うと、洸耶はしばらく固まったあと、ブッと吹き出した。



「だな!流矢は、高校どこ行く?」



高校かぁ…



「夕ヶ丘行きたいけど、推薦こないとなー」



この時の俺には、夕ヶ丘しか頭になかった。



甲子園に行きたい。俺の1番の夢。



「流矢ならくるだろ。俺も、夕ヶ丘行って、また流矢とバッテリー組みたい」



洸耶は俺に球を投げてくる。



グローブに球がスポッと入るこの感覚が俺は大好き。



真っ直ぐなストレートが決まる時が好き。



スタンドにボールが吸い込まれる時が好き。



俺は本気で、野球が好きだ。



「よしっ。じゃあ、俺がエースでお前がキャッチャーで、祐介がサード。これで夕ヶ丘行って、甲子園を見よう」



俺と洸耶は、笑いながら約束した。



俺が一番輝いていたのは、この時だったんだと思う。








「洸耶!流矢!お疲れ様!」



俺と洸耶が電車から降りて駅を出ると、中学のジャージを来た、萌と唯香がいた。



俺と洸耶は、野球の練習は電車で行って、電車で帰ってくる。



その日の帰りは、夜の8時。



ジャージ姿で待っているふたりを見て、俺と洸耶は顔を見合わせて笑った。