ーーーあれは、俺が中3の時のこと。






「おーい!流矢、こっち!」



向こうで洸耶が俺を呼んでいる。



俺は笑顔で手を上げて、野球帽を取って、洸耶の所へ走った。



俺は中1の時から、隣町の野球チームに入った。



小学1年生の時に始めた野球。



野球を始めた理由は、親の勝手な行動からだった。



なにより完璧主義の俺の両親。



それも、総合病院の委員長の親父と、親父の補佐をする母さん。



運動を少しでもやらせたいという親の要望に俺は仕方なく応え、野球を嫌々やらされた。



でも、やってみるとかなり楽しい。



俺は野球が大好きになっていた。



中学になると同時に、俺は部活に入らず、小学生の時にお世話になった野球チームを卒業して、俺は隣町の硬式野球チームに入った。



俺はピッチャー。そして、サウスポー。



洸耶は俺の相棒。簡単に言えばキャッチャーで、俺らはバッテリーを組んでいる。



洸耶とは、同じ野球チームで、中学が同じで、中学3年間同じクラスということもあり、凄く気が合うヤツ。



中3の時は、俺と祐介と洸耶で、毎日一緒にいた。



「はあ。あと何ヶ月もすれば、俺らはこのチーム引退して、受験モードになるんだな」



洸耶と肩慣らしでキャッチボールをしていると、洸耶は悲しそうに笑いながら俺にそう言った。



この時は、6月中旬くらいだったと思う。



俺はそんな洸耶に、強烈な球を投げた。



「ばーか。引退したって、俺らは野球続けるだろ?」