「吉春も、どうせ緋奈乃ちゃん選ぶだろ…?それと同じだよ」
「…ごめん。俺、取り乱して…」
吉春くんは祐介くんに向かって、深く頭を下げる。
緋奈乃は言葉を失ってるのか、両手で口を隠している。
「流矢は…誰にも分からないくらい、辛かったんだと思う」
祐介くんがポツリとそう呟いた瞬間、空き教室のドアがガラガラと開いた。
私たちが振り向くと、そこには…
「…光先輩?」
不敵な笑みを浮かべた、光先輩がいた。
なんで?なんで光先輩が、ここにいるの?
光先輩は口角をクイっと上げて、空き教室の中に入って来た。
そして、祐介くんの前で立ち止まる。
「お前、それで全部話したつもりか?一番大事なこと、言ってねぇじゃん」
光先輩がそう言った瞬間、祐介くんはいきなり光先輩の胸ぐらを掴んだ。
そして、目つきがキッと変わった。
「なんだよお前!なんで…知ってんだよ⁉︎」
祐介くんに胸ぐらを掴まれてても、光先輩の笑顔は不敵なまま。
「水原流矢が俺の秘密、知ってただろ?」
あぁ…確か…
私と光先輩を別れさせるために、水原くんが光先輩の秘密で、光先輩を脅したって言ってた…
「だから俺だって、その話のことならぜーんぶ知ってるわけ」
光先輩は、祐介くんの肩を強く押す。
祐介くんはよろけて、光先輩から離れてしまった。
「なあ、真湖。水原流矢のことなら、その話の真相、最後まで知りたいよな?」
光先輩が、試すように私に聞いてくる。
話の真相を、最後まで…
「真湖ちゃん!絶対聞くな!やめろ!」
祐介くんが私の肩を掴む。
嫌だ。
嫌だ。
なんで私…首を横に振れないの?
