「両想いなんだから、洸耶もオッケーするはずだったのに…洸耶、フったんだよ、萌を。フった理由が…流矢に申し訳ないからって」



そんな…



なんで洸耶は、大好きな八神さんをフッたの?



それに…水原くんに申し訳ないからって…



「流矢、その時聞いてたんだよ。萌が泣きながらその場を去った時、流矢が洸耶にキレたんだ。“なんで俺に気遣ってまで萌をフルんだ”って。流矢…泣きながら怒った」



祐介くんの肩が、微かに震えている。



祐介くんもその時のことを思い出して…辛いんだ。



「それから流矢は野球もやめて、夕ヶ丘の推薦も蹴った。洸耶とも話さなくなって…萌のことも避けた。多分だけど、今でも流矢は…萌のこと、好きなんだと思う」



祐介くんはぎこちない笑顔を私たちに向ける。



しばらく沈黙が続く。



その沈黙を破ったのは、吉春くんだった。



「…水原流矢が野球やめた理由って、八神さんが関係してんの?」

「ああ」

「バカじゃねぇの?たかが女のためで、上手かった野球捨てたのかよ‼︎」



吉春くんはそう怒鳴り叫んだ。



祐介くんはバンっ‼︎と机に手を叩くと、吉春くんに向かって叫ぶ。



「たかが女じゃねぇんだよ!流矢にとって萌は、本当に大事な女だったんだ!」

「でもおかしいだろ⁉︎それくらいで野球やめられるかよ!」

「じゃあお前も!野球か緋奈乃ちゃん、どっち選ぶか⁉︎」



吉春くんは、顔を俯かせて黙る。



祐介くんはため息をつくと、悔しそうに髪の毛をくしゃくしゃさせた。