「俺はお前になんか、会いたくなかったんだよ‼︎」
水原くんが、八神さんに向かってそう叫んだ。
その途端、A組のみんなも、シーンと黙り込む。
気付けばA組のみんなも、水原くんと八神さんを見ていた。
「お前といると…俺、辛くなるんだよ」
水原くんは、力ない声を出す。
「流矢、お願い…ふたりになりたいの」
八神さんが水原くんにそう言った瞬間、水原くんは八神さんを真っ直ぐ見つめた。
優しい瞳で。まるで、愛しいものを見るような瞳で。
水原くんは八神さんをしばらく見つめたまま、八神さんの腕を優しく掴んだ。
「祐介、ごめん。萌と話してくる」
水原くんは祐介くんを見ると、そのまま前を向き、
振り向くことなく、八神さんを引っ張って教室を出た。
…いきなり現れた、八神萌。
水原くんと、なにがあったの…?
「ちょ、ちょっと!なにあの女!流矢くんのなんなわけ⁉︎」
水原くんと八神さんが教室から出た瞬間、A組には女子の悲鳴が響き渡る。
私はなにも言う気力もなかった。
胸が、張り裂けそうなくらい痛い。苦しい。
水原くん。
あんなに優しい瞳をするんだ。
水原くん。
あんなに優しく腕を掴むんだ。
私。
水原くんの、なにも知らなかった。
